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日刊アメーバニュース

【V系】ヴィジュアル系はもう「終わり」?「2012年のV系を振り返る」第3回(ゲスト:NoGoD 団長)

2012年12月31日 10時30分
提供:ウレぴあ総研

NoGoDは、派手なキャラクターやメイクとテクニカルな設定を両立させたヴィジュアル系バンド。その中でもとくに異様なキャラと卓越した歌唱力を持つボーカルの団長さん。「2012年のV系を振り返る」第3回は当事者としてヴィジュアル系シーンで活動する彼に今年を振り返ってのお話を伺ってきました。えっ、ヴィジュアル系ってもう「終わり」なんですか……?

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――今年のヴィジュアル系シーンについて、振り返って何か印象に残ってることはありますか?

団長:それがですねー、特になにもないんですよ。

――えっ。

団長:ゴールデンボンバーが市民権を獲得したことくらいしか、話題がないんですよ。

――えっ……?

団長:ココ数年ずっとそうなんですよ。自分がこのシーンで活動していて思うんですけど、「ヴィジュアル系」って、もうとっくに終わってるんですよ。

――それはどういう意味でしょうか?

団長:数年前に、音楽業界の中で「ネオヴィジュアル系ブーム」と言われてた頃には本当はもう終わりかけていたんです。なので、いまはそのバブルがはじけた後でほとんど何も残っていないです。個人的な印象ですが、近年のインディーズシーン、ライブハウスシーンの衰退の仕方は目に余るものがあるなと。

――ヴィジュアル系シーン自体、若いインディーズのバンドが盛り上がっているからこそ成り立っているジャンルなのに、そこが弱ってるというのはたしかに問題ですよね。具体的にどういう部分で衰退してると感じているのでしょうか?

団長:これは俺の持論なんですけど、90年代にラルクやGLAYが一般層にも人気を博し、その後にDIR EN GREYやPIERROTの波が来たじゃないですか。あの世代のバンドたちは世間一般の人に「ヴィジュアル系ってこんなにかっこいいんだ!」って思わせてくれたんですよ。
そこを入り口にして「もっとヴィジュアル系を知りたい!」と雑誌を買ったりして、そこでまた色々なインディーズのバンドを知って「ライブハウスに行ってみよう!」という流れができていた。そんなふうに後輩バンドに還元できるようなバンドっていうのは、今はいないと思うんです。だからライブハウスに通うお客さんが減りつつある。

ヴィジュアル系のコアなファンをかき集めて大きな会場でできるバンドは多々いますけど、いま言ったみたいに、お茶の間に進出して、なおかつインディーズのバンドにまで還元できるようなバンドって、ゴールデンボンバーが出てくるまでいなかったと思います。

――いまはゴールデンボンバーがブレイクしていますが、90年代のようにヴィジュアル系シーン全体に活気があるわけではないと。

団長:実際インディーズのバンドはまだ本当の意味でDIR EN GREYとPIERROTから抜け出せられてないんですよ。好きな人に憧れるのは普通のことですし、決して悪いことではないですけど、いまバンドをやってる若い子たちは、「なぜ化粧をするのか?」っていうことがもうわからないんじゃないかと。

――いまの若い人だと物心ついた時からすでに「ヴィジュアル系」というものが存在してる世代ですよね。

団長:「どうして化粧をするのか」「なぜ髪を立てたのか」という話をするとヴィジュアル系のルーツやらなにやらで長くなるので詳しくは省きますけど(笑)、その理由ってだいたい大きく分けると「自分たちの世界観を音以外に視覚でも表現したい」か「対バン相手の誰よりも目立ちたい!」というふたつしかなかったと思うんです。

そこに、もうひとつ「単にヴィジュアル系のバンドが好きだから」っていう理由の子が増えたと思います。もちろん全員じゃないですけど、そういう姿勢がアーティスト写真とサウンドやライブに出ちゃってる。それが悲しいですよね。

――うーん……。

団長:人より目立ちたいがために化粧を始めたのが「ヴィジュアル系」だったはずなのに、人と同じような化粧をすることが目的になった時点で、このジャンルの精神は死んでるんです。
俺が一番嫌なのは、よくあるじゃないですか「メジャーに行くと化粧が薄くなる」みたいな。もちろんその時その時の衣装やコンセプトがありますから、それにあわせて化粧を変えるのはかまわないんですけど。たまに言っちゃうじゃないですか「別にヴィジュアル系じゃなくてもいい、音楽が出来ればいい」って。

――いわゆる「脱ヴィジュアル系宣言」ですね。

団長:それで全く違う別のバンドをやるならそれでいいと思うんですけど、同じバンドの中でその部分を変えてしまうのは「根本を変える」ということですよ。つまり「折れた」というか「信念が曲がった」ということじゃないですか。
じゃあ最初にヴィジュアル系をはじめようと思った理由はなんなのか聞きたいです、俺は。

――ヴィジュアル系って衰退しているとはいえ、まだまだ固定客の多いジャンルじゃないですか。その層を狙うために本来ヴィジュアル系バンドじゃなかった人たちが参入するっていうケースもありますしね。

団長:俺らも元々メタルバンドをやっていてヴィジュアル系シーンに参入した後乗り派なんですよ。このシーンにはたしかに固定客も多いし「商品」として売りやすくなるし。もちろん、そういう打算的な考えもありつつも「ここなら何かおもしろいことができるかも」と可能性を感じていたわけです。

以前は俺もヴィジュアル系を馬鹿にしてた部分も多かったんですよ。中学の頃はヴィジュアル系四天王(La'cryma Christi・FANATIC◇CRISIS・MALICE MIZER・SHAZNAのこと)の全盛期で、La'cryma Christiなんか特にサウンドがしっかりしてる上で見た目にも華があって……、10代の頃は「なんて無限に広がるジャンルなんだろう!」と思ってたんです。
でも自分がバンドを始めるような年齢になった時、当時通っていた専門学校の近くに有名なヴィジュアル系のライブハウスがあったんで行ってみたんです。そしたら、みんな同じような格好をして、同じような曲をやってる。「5バンドのイベントなのにこいつら全部一緒じゃねーか!」と、それですごく偏見を持つようになったんですね。

――そういうイベントやバンドがあるのは昔も今も否定出来ないですね……。

団長:でも、その時期はやっぱり良いバンドもいっぱいいたんですね。探れば探るほど。当時の専門学校の友達も「お前メタル好きならこのバンドがいいぞ!」とかいろいろ教えてくれて。そこから改めてまたヴィジュアル系の世界に興味を持っていって、徐々に「こんな面白い人達がいるならまだまだ捨てたもんじゃないなヴィジュアル系って」思うようになったんです。実際その頃に面白いと思っていたcali≠gariやムック、MERRYみたいなバンドは今でも残っていますし。

――その後ご自分でもヴィジュアル系バンドとして活動することになるんですね。

団長:それが05年くらいですかね。あの頃は楽しかったですね、イベントに出ても刺激になることばかりで。いまはもう正直、どうなんだろう……。たまにライブハウスにも足を運ぶんですけど、お客さんの入りが当時の1/3以下なんですよ。

2000年中頃くらいまでは、中堅のバンドがたくさんいたんです。常に6~70人の動員を抱えているような中堅バンドを5つ集めたら、それだけで3~400人の集客があるイベントができるじゃないですか。いまって中堅バンドが少ないんです。俺らも含めて中堅なんですけど、若手と中堅の差がものすごい開いてしまっているんですよね。

結局いまのシーンで残ってるのは、当時と同じ奴なんですよ。バンドを変えて、名前を変えても、やってる人は実はあまり変わらないんですよね。そこに乗れなかった次の世代の若手との差がすごく離れてしまっているんです。その格差が激しいというか。

――いま人気のあるバンドのメンバーを見てるみると、結成は最近でもそのうちの何人かは2000代前半からシーンで活動しているというケースは少なく無いですね。

団長:完全新規でヴィジュアル系シーンに参入するには、キツい状況だと思います。このシーンは「ヴィジュアル系」っていうジャンルに囚われて、それに飲まれて「ヴィジュアル系以下」のことしかできなくなっちゃった。

先人たちが広げていった「ヴィジュアル系」というフィールドを風船に例えると、中にいる人間が少しづつ空気を吸っていって風船がどんどんしぼんでいってしまって。唯一その風船に空気を入れて膨らませたのはゴールデンボンバーだけなのかなって。もちろん俺らも同期の人間としてやらなきゃいけないことはたくさんあるんですけど。

ゴールデンボンバーやJin-Machineは俺らとほぼ同期なんですね。ヴィジュアル系に可能性を感じてこのシーンに来たはずなのに、右に習えの事なかれ主義のバンドが増えすぎて嫌になってた世代だと思うんです。

――音楽業界自体が不況と呼ばれて久しいですしね…。

団長:たしかに娯楽を削らなければいけくなった時、「ライブにいかなくても、CDを買わなくてもYouTubeもあるし」って思っちゃうでしょうし。それでもライブに来てもらえるようにするためにはということを考えなきゃいけない。だけど音楽業界ってまだ考え方がバブルなんですよ。90年代でとっくにはじけてるのに、まだその時と同じ方程式を当てはめようとして、もう無理なのに。

俺らが若い頃は情報源が雑誌しかなかったから、雑誌に載ればCDやデモテープが売れた時代なんですよ。正直「昔が良かった」なんて言っちゃいけない言葉だと思うんですけど、いまは雑誌を見て、検索してHPやYouTubeを見れるから、お金をかけなくてもそのバンドを知れる時代なわけでしょう。でもそれって悪いことでもなくって、バンド側がお金をかけずに宣伝できるので素晴らしい時代だなと。

一方で、「YouTubeがあるからCDが売れない」みたいな意見がたまに出てくるじゃないですか。そんなのどうでもいいんですよ。それでも売れる人は売れるから。
だから、YouTubeがあっても「ライブを見たい」と思わせるようなバンドにならなくちゃいけないのに、みんな「時代だからさ」「俺らいい音楽やってるから……」って言っちゃってる人が多いですよね。

そうじゃなくて、どんな時代にだってヒット商品はありますし。「自分たち」っていう商品がどれだけ他と違って良い物、面白い物を出せるかっていうのを、突き詰めたジャンルがヴィジュアル系だと俺は思うんです。
PVや動画がどんどん出せる時代に、ヴィジュアル系ってものは特化していかなくちゃいけないのに、ライブにしてもメイクにしてもみんなドンドン普通になっていっちゃうから。

結局ゴールデンボンバーが売れた理由って「ライブが面白いから」でしょう? 俺らが今メジャーでやらせてもらえてるのも、自分たちのことをライブバンドだと思っているからです。
ライブはフォトショップでは修正できませんからね(笑)! 視覚・聴覚・たまに嗅覚……ほら、衣装も臭くなるんで……(笑)。そういうのを含めたライブの総合演出というか、他のロックバンドが照明に凝ったりVJをいれたりしてますけど、俺らはそれに加えて化粧できますからね! 他のジャンルよりも武器がひとつ多いんです。それを思う存分生かせば、もっとやれるはずなのに。お客さんも見てて楽しいはずなのに。

――いまはアイドルのほうがそういう流れにのって面白いことをやってますよね。「面白いことをやったもん勝ち」みたいな。アイドルとヴィジュアル系って似てるところも多いと思うんです。団長さんはアイドル好きを公言してはばからないことでおなじみですけど、そのへんはどう感じてます?

団長:俺はアイドル大好きですからねー。「やったもん勝ち」だったらなんでも良いかっていうとそうでもなくって。例えばですけど、ももいろクローバーZがが丸坊主にしたらファンは離れてしまうじゃないですか。彼女たちが、そういうアリかナシかの超えたらいけない一線のギリギリにいることがすごいというか。

たまに地下アイドルのイベントに行くんですけど、ヴィジュアル系が一時期ガゼットみたいなのばっかりになったみたいに、曲もパフォーマンスも、ももクロちゃんフォロワーばっかりです。なのでアイドルブームも、もう終わりなのかなあって。

――ヴィジュアル系もアリかナシかのギリギリのゾーンってありますよね。例えば、ゴールデンボンバーが作詞作曲をしてなくて全部エアーだったら「ナシ」になってたかもしれないですよね。「なんでもあり」といいつつジャンルの中に明文化されてないラインが存在するのも、アイドルとヴィジュアル系って似てるんじゃないかと。

団長:アイドルのファン、お笑いのファン、ヴィジュアル系のファンって似てるんですよ。数年前にお笑いのブームがあって、いまはアイドルのブームがピーク、じゃあ次はバンドブームが来ると思うんですよ。それは声優さんの曲やニコニコ動画系の楽曲を聴いていてもそうで、だんだんエレクトロな方向からバンドサウンドになってきてる。つまりこの状況ってヴィジュアル系にとって有利な状況だと思うんです。だけどみんなボーダーを越えようとしない。保守的になりますよね、下手に動いて今までのお客さんを逃してしまで新しいお客さんをつけたいって人も少ないですよね。だけど、ロックバンドが保身に走ったら終わりだろって。そのギラギラ感のなさがいまのヴィジュアル系のダメな部分ですよ。

――来年のシーンはどうなっていくと思いますか?

団長:ゴールデンボンバーブームにあやかるというか、そこを入り口にしていろんなヴィジュアル系バンドに目を向けてもらえたらいいなって。そしたら来年のシーンは盛り上がるだろうし、その中で俺たちも台風の目になっていきたいです。

一方で「ヴィジュアル系シーン」にコレ以上伸びしろがないとしたら、JROCKシーンでヴィジュアル系バンドがどう立ち向かっていくかという課題になっていくのかなと思いますね。

――近年、ヴィジュアル系バンドがアイドルやいわゆる「ロキノン系」と呼ばれるバンドと一緒にイベントに出ることも増えてきましたからね。

団長:来年はもっと異文化交流が進むと思います。俺個人としては、絶対に化粧は落とさずに交流していきたいなと。だってそうじゃないと「異文化」にならないじゃないですか。異文化の交流するときに相手に合わせても意味が無いので。
普通のイベントに出るときは化粧薄め、ヴィジュアル系のイベントに出るときは濃い目、みたいに分けるのではなくて、あくまで「異文化」として戦って行きたい。

だから、ヴィジュアル系にプライドを持っているファンの人も怖がらずに外に出て欲しいし、いろいろなジャンルを知った上で「この人たちが良い」って思ってくれるヴィジュアル系にならなきゃいけないとおもいます。

そうやって他のジャンルも巻き込んでいけば、ヴィジュアル系だけじゃなく、JROCK全体が盛り上がっていけるんじゃないかな。

【関連リンク】
・NoGoD公式サイト
・NoGoD公式ブログ
・団長ツイッター

こちらのレポートもどうぞ!
「2012年のV系を振り返る」第1回:ゲスト・大島暁美さん(ライター) [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11434 ]
【V系】インディーズシーン精通の仙人が語る!「2012年のV系を振り返る」第2回(ゲスト:だぃた) [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11435 ]
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