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月着陸で中国に負ける可能性、NASA元長官が指摘–「計画全体を再考すべき」

2025.12.09 07:07

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米航空宇宙局(NASA)元長官のMichael Griffin(マイケル・グリフィン)氏は連邦議会で月面着陸において米国が中国に遅れを取る可能性を指摘した。

 米国時間12月4日にワシントンDCで開かれた下院の宇宙航空小委員会の公聴会でGriffin氏は、NASAが主導する月探査計画「Artemis」(アルテミス)計画で政策決定が障害になっていると語った。「我々は、理にかなっていない計画に固執してしまっている」

 2027年の打ち上げが予定されている、有人月探査ミッション「Artemis III」(アルテミス3号)は、NASAが開発した宇宙船「Orion」(オリオン)と米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)が開発している「Starship」(スターシップ)の「有人着陸システム(Human Landing System:HLS)」が連携して月着陸を目指す。

 まずはStarship HLSが打ち上げられる。Starship HLSは月での探査活動に活用する機材を月まで運ぶために、地球からの打ち上げで大量の燃料を消費してしまうことから、Starship HLSに燃料を補給するためにStarshipが打ち上げられる。

 Starshipから燃料が補給された状態で、Starship HLSは月を周回する軌道でOrionを待っている。4人の宇宙飛行士が搭乗するOrionはロケット「Space Launch System」(スペース・ローンチ・システム、SLS)で打ち上げられ、Orionは月に向かう軌道に載せられる。数日後、Orionは月を周回する軌道に乗り、その後、OrionとStarship HLSはドッキングする。

 4人のうち2人がStarship HLSに乗り移る(2人はOrionにとどまる)。2人が乗ったStarship HLSは降下、月の南極付近に着陸して、2人は月面で活動する。その後2人はStarship HLSで月を離れ、Orionと再ドッキング。4人の宇宙飛行士は地球に帰還することになる。

 Griffin氏は、こうしたArtemis IIIを含めたすべてのArtemisのミッションを中止すべきと公聴会で主張した。NASAと政府は、月着陸計画全体を再考すべきという。

 Artemis III以降の月探査ミッションは、先に説明したように軌道上での複雑な燃料補給に依存している。Starship HLSへの燃料補給が完了するまでに、Starshipを何回か打ち上げる必要があるが、正確な回数はまだ不明(SpaceXは12回と見積もっている)。この考えはまだ実証されていない。SpaceXは、Starshipの今後の打ち上げ試験で燃料補給の仕組みを試験する予定だ。

 Griffin氏は、燃料を補給するStarshipとStarship HLSがランデブーする間、Starship HLSが軌道上で待機する時間を考えると、Starship HLSに搭載される燃料がミッションを続行しているうちに蒸発(ボイルオフ)してしまう可能性も指摘していると米メディアSpace.comは伝えている

 「現在の技術ではこれらの問題を克服する方法は見当たらない。したがって、そのようなアプローチを追求すべきではない」(Griffin氏)

 2027年中に打ち上げるというArtemis IIIのスケジュールについては、SpaceX内部でも懐疑的とされている。米メディアPoliticoが入手したSpaceXの内部文書によると、月着陸は最短でも2028年9月と見積もっている。同メディアによれば、SpaceXは、これらのスケジュールをNASAに伝えておらず、12月中にNASAに提示するつもりだという。

 現在、NASAの暫定長官を務めているSean Duffy(ショーン・ダフィー)氏はStarship HLSの開発が「遅れている」と批判。10月に月着陸船の開発や製造を競わせるため、他社を検討している可能性を示唆した

 「大統領と私は、大統領の任期中に月に到達したい。Blue Origin(ブルー・オリジン)のような他の宇宙企業をSpaceXと競わせるつもりだ」(Duffy氏)

 「我々は慎重かつ迅速に、最初からやり直すべきだ」とGriffin氏は語る。「我々は多くの時間を失ってしまった。中国が最初に月着陸を実行するかもしれない。中国が進歩しているとはいえ、ミッションの成功は誰にも保証されていない。たとえ、この最初の一歩で勝てないとしても、追求することをやめて、他国にその場を譲るわけにはいかない」

 NASAは現在、ホワイトハウスから提示された予算案で多くの科学探査ミッションが中止される危機にある。連邦政府の人員削減で何千人ものが失われるという混乱の最中でもある。

 「もし中国が米国より先に月面での足場を築くことができれば、今後、月面の特定の地域を誰がどのように利用するかを決定できるようになるかもしれない」(Griffin氏)

公聴会で証言するGriffin氏。同氏は2005年4月~2009年1月にNASA長官を務めていた(出典:House Science, Space, and Technology Committee / YouTube)
公聴会で証言するGriffin氏。同氏は2005年4月~2009年1月にNASA長官を務めていた(出典:House Science, Space, and Technology Committee / YouTube)

関連情報
公聴会(証言内容や動画など)
Space.com
Politico

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