橙の光、行きもしないカラオケの練習、ボクが住む町にすら雪が降った朝、震える右手、毛玉のニット、あまい電話、味噌ラーメン、延長したさよならはやってきて、あなたの〈代え〉は既に居るからと言い聞かせた。
それでもボクはあなたを手放せない。
赤紫を宿す時、瞳に色香が落ちる。
──出逢ってしまった、愛してしまった。
他の誰でもないボクのために向かう鏡に映るは6時間睡眠の〈生もの〉だった。
失ったあなたを探しに出掛けて、結局はSNSであなたの行方を知るなんて皮肉で残酷な話だ。
ねえねえねえねえ
君に見て欲しいストーリー
スルーされたら少しつらい♡
君しかいないフォロワー
連絡待ってないんで
全然待ってなんかないんで
「あたしは1人で生きてゆけるの」って
強がりすら「かわいい」で終わらせる君に
勝てる気がしない♡ラブなのね
認知症の母がグループホームに入って10年の月日が流れようとしている。歳を重ねてなお美しく、足腰が丈夫で健康そのものの母より私の方が老けたような気がした。病気にもかかり、いずれ自分の目は見えなくなる。
あなたと過ごす1日はどうしてこんなにも短く感じるのだろう。現在はベンチの隣に座り、本日行われた音楽フェスについて喋りながら、東京行きの最終新幹線を待っている。
その新幹線に俺は乗らない。
きみがすんでいるまちにでんしゃがとまるだけでむねがきゅうっとなる。
どうしようもなく惹かれる人がいる。
彼はつり上がった眉と細い目、しっかりした鼻や顎、綺麗な山を描く薄い唇、ストレートのセンターパート、優しく甘めな〈塩顔〉で年齢よりも若く見えた。
僕らが見えるものは。
昨日、330円でネックレスを買った。値段に見合ったフェイクパールだが、大き過ぎず主張もなく丁度いいサイズの品だ。
先週木曜日、閉店間際に立ち寄った古着屋の奥にささやかなアクセサリーコーナーがあり、そこで見つけた自分は何て買い物上手なのだろうと浮かれていた。
生まれて初めて動画にコメントしたらバズってしまった/
〈太陽〉という名前がぴったりな男友達がいる。
彼はライオンのような外見で、口が悪く、大雑把な性格だが、この町に引っ越してきたばかりの私が、友人を探すべく入ったランニングサークルにおいて、すぐ声を掛け、歓迎してくれた。

「ウチが譲ったんだから何がなんでも付き合いなよ」
紅一点のくせに、女好きで女にだらしないボーカリストが言った。
現在はバンドの打ち合わせという名の飲み会で、楽曲制作から抜け出してきたギタリスト(ボカロPとして知られ、メンバーのうち最も多忙)が早くも酔い潰れてテーブルの端で眠ってしまっている。
《前回のお話》
ようやく気持ちが通じ合った咲良(さくら)と爽(そう)。爽は恋人の存在を公表して堂々と、尚且つ誠実に咲良と交際する。幸せいっぱいな咲良に、同居人まどかの影が忍び寄り……?
《前回のお話》
偶然が重なって、恋が動き出す。
自分の気持ちを認めたくなかったり、過去のトラウマにより素っ気なくする咲良(さくら)に、不安を覚えつつも爽(そう)から歩み寄った。互いを知るためにとことん話し、楽しいデートになる筈が咲良の一言でぶち壊しに……?
《前回のお話》
主人公の咲良(さくら)はベーシストの爽(そう)が気になり近付いたが、自分の気持ちに未だ確信を持てない様子の爽から疑問符つきの「好き」を投げられ、次はファンとバンドマンの距離感でいいと考える。しかし、運命の悪戯でふたりは再会するのであった。
《前回のお話》
高級住宅街で親友と暮らす咲良(さくら)は息抜きに行った先の飲み屋でバンドマンふたりと隣り合い、その片方・爽(そう)に一目惚れ?
ライブに誘われて足を運んだはいいが、ファンを見て場違いかも知れないと感じた。
さて、ライブと恋の行方は……。
親友は超がつくほどのお嬢様だと理解していても、よもや大学の卒業式で「自分の家を買ってもらったの。これからも一緒にいましょ」と言われるとは思うまい。
まどかと私は住む世界が違い、語り合うことで金持ちや庶民の生活などを知って、互いに楽しんでいた訳だが、この日を機に平行線が交わる。
あの商店街通りにあった昔ながらの喫茶店を私はまだ忘れていない。1年ほど前に別れた恋人がよく、待ち合わせの目印として入り口の錆びたガーデンチェアに座っていたところだ。
大好きなバンドの最高にハッピーなニュースがあった日、ちょうど僕も夢に向かってひとつ挑戦してみたんです。
無事叶いました(とはいえゴールではなく、これからがスタート)。
僕は音楽学校に通っている。周囲の者は「普通の高校に行け」「今からでも間に合う」「ちょっと楽器ができたくらいで食べてはいけない」などと口を揃えて言う。
124番のルージュはいつも〈当たり〉で、機嫌のいいあたしにあなたが笑いかけたの。
あたしたちは一緒に暮らさないし、次いつ会えるかも分からないし、何より添い遂げるつもりもないのよ。
だからあたし、結婚式じゃなくてお葬式で流して欲しい曲を決めていたんだけど。
あなたが「今どきCDは棺に入れられないらしいよ」なんて意地悪を言う。ひどい人よね。
それなら何も持っていけないのね、と、少し、ほんの少し、生暖かい部屋が涼しく感じたわ。
最愛とも言い切れない妻に先立たれて10年もの歳月が流れた。
彼女は雲がかかった満月のような人で、差し詰め私はあの人のことを見上げながら鳴く秋の虫であり、いつだか思い付きでそう口にしたら
「じゃあ、春夏冬はどうなのよ」
と問われる。
掻き毟って右足に赤黒い血が流れた たらりと
ヒリつくボディーソープ いつも肌に合わない
私が私であることの証明 なくすつもりが跡に残る
僕は冷やし中華が嫌いだ。小学生の頃の夏休み、母が毎日のように素麺と交互に昼食として出してきたので食べ飽きている。
我が家の具は、紅生姜、(薄焼き)卵、もやし、きゅうり、ハムであり、それがいつまでも揺らがなかった。