米Google社で主任科学者を務めるのが、Krishna Bharat氏だ。Google誕生前のインターネット検索黎明期に「AltaVista」というサービスの開発チームで、PageRankに似たウェブページの格付けに関する研究をしていたこともある人物だ。そのBharat氏が、最近もっとも関心があるのがインターネットとジャーナリズムの融合。ここ数年で最大の功績は人気サービスとなっている「Google News」の開発である。「ウェブの進化にあわせて、人々とニュース情報の接し方も変わり始めた」と語る同氏に、その真相やGoogle Newsの舞台裏を聞いた。
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--あなたはGoogle News誕生の5年以上も前に、その前身を作っていたと聞いていますが。
「Krakatoa Chronicle」のことですね。1995年頃の話で、ジョージア工科大学時代の研究課題の1つでした。NEC C&C研究所の訪問研究員である神場知成氏らとパーソナライズドされたニュースサービスを作りました。それが「Krakatoa Chronicle」です。
当時はまだウェブでニュースを提供している会社はほとんどなく、あるのはAOLやProdigyといったパソコン通信上で提供されている有料のニュースサービスだけでした。
しかし、いずれこういったニュースサービスが増えるだろうという前提で、当時あった数少ないニュースサービス、Nando Timesをベースに研究していました。私が興味があったのは「Information Retrieval」(情報の取り出し)で、当時はまだ登場したてだったJava技術を使って、ニュース記事を取り出すソフトをつくりました。
Krakatoa Chronicleでは、こうして取り出した記事を、紙の新聞のようなレイアウトで再構成したり、ユーザーが指定した数だけ記事を表示したりできました。また、ユーザーが特定の記事を選ぶことで、ユーザーの記事の好みを学習するといったことも可能でした。
これは純粋に論文を書くための研究プロジェクトでしたが、私がジャーナリズムに関わる最初のきっかけでもあったのです。
--それから5年以上経ってGoogle Newsが誕生したわけですが、そのきっかけはなんですか。
そもそものきっかけは9.11でした。9.11以降、私はいろんな切り口で異なる視点に目を通そうと、ニュースサイトを読み歩く日々が続きました。この経験を通して気がついたのが、これが予想以上にしんどい作業だったということです。
ウェブというのは、本来は他のウェブページの関連する情報にハイパーリンクすることを前提としています。しかし、ニュースサイトの元となる新聞記事などは、もっと独立した文化を持っています。つまり、他のニュースとリンクや連携していることはまずなく、自分で記事を探して、そこへ見に行かなければなりません。
これとは別に重複の問題もあります。ニュースサイトの記事には、通信社の記事を流用しただけのものもたくさんありますし、似通った内容の記事もたくさんあります。1つのニュースについて、5つほどの異なる視点を集めようとすると、実はそれだけで1時間くらいの作業になってしまうことも多いのです。そこで、私はいろいろな研究を始めました。
--具体的にはどんな研究だったのでしょうか。
「SARS」なら「SARS」、「選挙」なら「選挙」と、同じ話題のニュースをひとまとめにすることは、実はコンピュータが得意とするところです。いわゆるクラスタリングという技術で、まずはこれを研究しまた。
次に取り組んだのが、「個々の情報についてどれだけ一般の関心があるのか」という指標の導入です。個々のニュースが一般にとって関心度が高いか否かは、個々のニュースサイトの編集者が判断して決めています。コンピュータは、どれだけのニュースサイトが同じ話題を取り上げているかを分析するのです。同じ話題が世界中のニュースサイトで取り上げられていれば、おそらくそれは一般の関心が高い話題でしょう。逆に1社しか取り上げているところがなければ、関心の低い話題といえます。
続いて、これらの情報を、例えば「政治」や「経済」といったセクションごとに分類できるかが課題になりました。こうした課題をクリアして、記事を並べて表示させたところ、ここに新しいより民主的なメディアとしての可能性があるのではないかと気がついたのです。
つまり、1つのニュースについて、1つの視点だけでなく、いろいろな見方、色々な視点を楽しめるということです。こうして実現したのがGoogle Newsなのです。
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