Photo: James Matsumoto / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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フィガロ(フランス)

フィガロ(フランス)

Text by Régis Arnaud

この国は世界の保守派が羨む“ユートピア”──あらゆる面で右傾化し、衰退を続ける日本の「左派」の歴史と現状を仏紙「フィガロ」が紐解く。

「人間にファーストもセカンドもない!」

声にならない叫びなのか、高崎駅で一人の青年が優等生的な革命スローガンの書かれたプラカードを両手に持って掲げていた。道を行き交う人は、それにほとんど気づきもしない。匿名希望のこの青年がそこにいたのは、移民流入の制限を呼びかけるポピュリズムの政党「参政党」の集会に抗議するためだった。

実際、数メートル先ではオレンジ色のシャツを着た数百人の参政党支持者が、代表である神谷宗幣の演説に熱烈な拍手を送っていた。神谷が語るのは、外国人問題、ワクチン強制接種問題、それからジェンダーの混乱など、得意とするイデオロギー上の定番ネタの数々だ。

青年に写真を撮らせてほしいと頼むと、彼は自分の存在感をさらに押し殺そうとした。顔を隠すように着けたマスク越しに「顔は撮らずにプラカードだけにしてください」と言う。

両手にプラカードを掲げ、自分はその影に隠れて消え入りそうなこのサンドイッチマンこそ、いまの日本の左派の象徴である。

2026年2月、日本では総選挙がおこなわれ、自民党の最右翼を代表する高市早苗が圧勝を収めた。自民党が単独で衆議院の議席の3分の2以上を獲得するという戦後史上最高記録となる結果だった。対する野党陣営は壊滅状態だ。

立憲民主党と公明党が合流してできた中道改革連合は勢力を著しく弱らせ、保有議席数を70%も減らした。1989年の参議院選挙では自民党相手に大勝を収めた社会党(現社民党)も、いまや参議院議員が2人いるだけだ。また、日本の政界は共産党があるという特異性でも知られているが、その共産党も議席数を8議席から4議席へと半減させた。

いまは右派にとって躍進の時期であり、左派にとっては孤立無援の局面なのだ。左派を公言する上智大学教授の中野晃一も悄然として、いまが「どん底」だと語る。

これは驚くべき事態なのか。いや、そうではない。これがむしろ日本では既定路線なのだ。それほど日本の政治において左派の不在は際立っている。


勝負の土俵にさえ立てない左派政党


一見したところ、日本は左派が勢力を伸ばす条件が揃っている国に思える。中流階級の崩壊が始まり、若者や高齢者は困窮し、女性は低処遇に置かれていて、新たな移民の流入も進む。それにもかかわらず、この国には右傾化の歯止めとなるものが何一つない。

そのため国外から見ると、日本は世界の保守派がうらやむユートピア列島になっているのだ。世界にはいまも革新主義がもてはやされている国々があるが、すべてが逆さまになる鏡を使ってそうした国々を映し出すと、日本が現れるとでも言えばいいだろうか。
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