「飛脚が1日100km走った」という話、実は「一人の人間が1日で走った距離」と誤解されることで広まった数字です。
結論から言うと、この数字はデマというよりは、「システムの能力」と「個人の能力」の混同から生まれたものだと考えられています。
江戸時代の飛脚(特に幕府の公用飛脚や大名飛脚)は、数キロ〜数十キロごとに宿場で次の走者に交代するリレー方式で走っていました。
江戸〜京都間(約500km)を最速の「継飛脚(つぎびきゃく)」は、約60〜70時間(2〜3日)で駆け抜けました。
これを計算すると、1日あたり約150km〜200km移動していることになります。
この「チーム全体の移動距離」が、いつの間にか「飛脚は1日に100km以上走った超人である」というイメージにすり替わってしまったのが最大の原因です。
古武術や日本伝統の身体操作として注目された「ナンバ走り(同じ側の手足を同時に出す走り方)」が、「これを使えば疲れずに1日100km走れる魔法の走法だ」と、メディアや書籍で少し誇張して語られた時期がありました。これにより、「飛脚=驚異的な身体能力を持つ集団」というイメージが定着しました。
ドイツ人医師ベルツが、飛脚の持久力に驚いて「肉を食べずに玄米と漬物だけでこれほど走れるのか」と書き残したエピソードが有名です。この逸話が「飛脚=無尽蔵のスタミナ」という文脈で語られる際、数字がどんどん盛られていった側面もあります。
当時の記録や飛脚の労働実態から推測される、現実的な数字は以下の通りです。
| 種類 | 走った距離(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 一般的な飛脚 | 1日 30km〜40km | 現代のフルマラソン程度。これでも十分すごいです。 |
| 超一流の飛脚 | 1日 60km〜80km | 宿場をいくつか跨いで走る場合もありましたが、連日は不可能です。 |
飛脚の凄さは「個人のスピード」ではなく、「24時間休まずタスキを繋ぎ続けるネットワークの正確さ」にありました。
でも現代のウルトラマラソンでは1日100km走ってますよね?